SAMPLE
初版:2007年12月29日 冬のコミックマーケットにて委託販売
ジャンル:THE鑑識官
取扱CP[芦茂+遠山・ゴールディ・桜]
コピー本(表紙は和紙+クリアフィルムによる2重構成)
表紙だけで値段が跳ね上がった曰くつきの逸品。
中身はまさかまさかの金ちゃん片思い本。
1
「……そういつまでも子供扱いしないでくださいませんか?私だってもう高校生なんです」
「ん?遠山さんは遠山さんだよ。
齢なんて関係な…高校生!?
うわー、僕も年を取ったわけだ」
「何を当たり前のことを…」
何をしても、貴方に追いつくことはできない。
だからせめて。
「ご自分では若いつもりでいても、そのうち誰にも相手にされなくなるのですよ?」
背伸びをさせて。
「それは困るなあ。識子ちゃんに、相手にされなくなっちゃったらどうしよう?
ねぇ遠山さん、どうしたらいいと思う?」
私を見てくれなくても構わないから。
「知りません」
あなたの、近くで。
2
南東京市の空は、いつにもまして青く。
大安、好天。実に吉日。
こんな日に挙式できるなんて果報者なわけで。
その果報者の名は、江波識子と言いました。
私はそれを、一人の参列者として見つめています。羨望と、嫉妬と、安堵そして不安がないまぜになった複雑な心境で。
羨望は、そうして将来を分かち合えるだけの相手にめぐり合えたということへ。嫉妬は、綺麗なドレスを身に纏うその『お嫁さん』という立場への、子供っぽい感情。
安堵はこれであの方も識子さんを諦めるのではないかという期待、不安は、「……人妻。」とぼそり呟くのを耳にしてしまったことに由来して。
神様、不公平です。どうして私はこんな人を好きになってしまったのですか。
悲しくなる様な思いで一人、両手を胸の前で組みました。抜けるような晴天、ここだけは曇天。
私の気持ちなんて(ええもう完全に!)知る由もなく、シルクのハンカチを引き裂かんばかりに噛みながら、芦茂さんは新郎新婦に祝福(呪詛)の言葉を送っていました。
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